まつみレディースクリニック三田

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第3回日本不育症学会(5):「APLパネル検査(後編)」

第3回日本不育症学会のWEB講演会の5回目の参加報告です。

一般演題の中から、「抗リン脂質抗体検査におけるAPL(antiphospholipid antibodies:aPL)パネル検査の導入」というタイトルの国立成育医療研究センターの小澤伸晃先生によるご講演を解説しているところでした。

前回、前置きが長くなってしまいました、演題の解説の前にもう一度おさらいです。

 

抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome、APS)は、血中に抗リン脂質抗体とよばれる自己抗体が存在し、さまざまな部位の動脈や静脈に血栓症(脳梗塞や下肢深部静脈血栓症)を起こしたり、習慣流産などの妊娠合併症などの臨床症状(=臨床基準)をきたす病気です。

APSを診断するためには、臨床基準とともに検査基準も満たすことが必要です。

抗リン脂質抗体を正確に調べるためには、抗カルジオリピン(cardiolipin; CL)抗体と抗β2GPI抗体を調べる必要があります。

それぞれの抗体において、免疫グロブリンの2つのサブクラスについて、つまり、CLーIgGとCLーIgM、および、β2GPIーIgGとβ2GPIーIgMを調べる必要があります。

抗リン脂質抗体パネル検査(=APLパネル検査)とは、この4つの検査項目を網羅的に調べる検査です。

 

さて、今回、小澤先生が発表された演題の解説です。

わかりやすく説明すると、演題はAPLパネル検査を行った症例を対象とした臨床統計のお話でした。

抗リン脂質抗体の上記臨床基準を満たす症例においてのAPLパネル検査の陽性率や再現性を調べ、特に、抗カルジオリピン(cardiolipin; CL)抗体と抗β2GPI抗体の両者の陽性例を比較検討していました。

 

結果ですが、抗カルジオリピン抗体のIgGとIgMの陽性率は、血栓の既往のある患者では80%と40%でした。

この集団での抗β2GPI抗体の陽性率は80%と20%でほぼ同じでした。

産科合併症の既往がある集団では抗カルジオリピン抗体と抗β2GPI抗体はともに、IgGサブクラスが概ね6%で、IgMサブクラスが概ね3%でした。

検討した症例のうちの3症例で4つの抗体が全て陽性で、8症例のうち7症例で検査に再現性を認めました。

 

結論ですが、このようにAPLパネル検査を用いると抗リン脂質抗体は、CL(=cardiolipin:カルジオリピン)とβ2GPIに対する抗体、つまり、抗カルジオリピン抗体と抗β2GPI抗体が、2つとも陽性となる症例が多いことがわかりました。

また、これはIgGとIgMという免疫グロブリンの2つのサブクラスにおいて共通して認められました。

しかし、カルジオリピンとβ2GPIの両者の抗体のうち、単独の抗体が陽性となる症例も存在し、必ずしもすべては一致しないという結果でした。

 

今後、今回お示ししたように、このAPLパネル検査の導入により、APSが正確に診断できる可能性があります。

なお、このAPLパネル検査は保険適応が認められており、当院でも2月より検査を受けることができます。

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