2月20日月曜日は、18時からクリニックを藤井達也先生に任せて、東京大学婦人科癌免疫化学療法研究会のWEBミーティングに参加しました。
東京大学医学部産婦人科学教室同窓会の大須賀穣会長のご挨拶のあと、以下のようなプログラムで活発な質疑応答がありました。
今回のプログラムは、
①婦人科悪性腫瘍の手術教育について(開腹、低侵襲等)
②免疫チェックポイント阻害剤の実施状況について
③診断・治療・合併症管理が困難であった症例
の大きく分けて3つのセッションから構成されていました。
③診断・治療・合併症管理が困難であった症例の中に大変興味深い演題があったので、簡単にご紹介します。
演題名:「中間型トロホブラスト腫瘍を疑い、子宮全摘を行い、妊娠組織遺残と判明した一例」
演者:東京都立墨東病院産婦人科 土井裕美子先生。
なお、研究会の内容についてメールでのお問い合わせが増えていますが、メールでは回答しかねるので、詳しい説明が必要な方は外来を受診してください。
今回はわかりやすく、用語の解説と疾患の要点のみ、かみ砕いてお話します。
中間型トロホブラスト腫瘍とは、トロホブラスト(=trophoblast)が腫瘍性に増殖している状態で、ある2つの病態の中間に位置する疾患と言い換えれます。
「トロホブラスト」というのは、受精卵に存在する細胞で、詳しく説明すると受精卵が少し育った胚盤胞の膜にあり、栄養膜細胞とも呼ばれます。
この病気(腫瘍)は絨毛性疾患という疾患群に大きくカテゴライズされますが、この絨毛性疾患には、まだ少しは馴染みのある病気の、胞状奇胎や絨毛がんなどが含まれています。
絨毛性疾患には、上記の病気の他に、存続絨毛症や「トロホブラスト腫瘍」があり、この「トロホブラスト腫瘍」はさらに胎盤部トロホブラスト腫瘍と類上皮性トロホブラスト腫瘍の2つの病態に分けられます。
繰り返しになりますが、「トロホブラスト腫瘍」は栄養膜細胞に類似した腫瘍細胞が子宮に腫瘤(腫れもの)を形成する病気です。
胎盤部と類上皮性の接頭語の違いは、増殖するトロホブラスト(=栄養膜細胞)の起源(=発生する場所)のちがいを表しています。
絨毛性疾患は絨毛細胞の増殖を反映して、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)という正常妊娠のときに上昇するホルモンが、異常高値を示すことが多いです。
性器出血や子宮の腫大によって、外来を受診されますが、妊孕性を温存されない方には子宮全摘術が選択されます。
一方、妊孕性を温存する必要がある場合に、手術治療や薬物療法などから最適な治療を選択する必要があります。
トロホブラスト腫瘍は、隣接組織に浸潤または転移する可能性があります。
では「中間型」とは、なんでしょうか?
中間型栄養膜細胞(=中間型トロホブラスト)とは、細胞性栄養膜細胞から合胞体栄養膜細胞と、受精卵の中にある栄養膜細胞(=トロホブラスト)という細胞の性質が変わっていく過程で、この2つの(=細胞性と合胞体の)中間に位置する細胞です。
従って、中間型トロホブラストは、2つの(=細胞性と合胞体の)栄養膜細胞の中間の性質を持ってます。
ここまで、馴染みのない単語の解説にお付き合いいただき、大変お疲れ様でした。
この病気は、臨床症状が、最近取り上げているPPOCとの鑑別が重要な疾患です。
RPOCについては、過去ブログをブログ検索機能を使って参照してみてください。
中間型トロホブラスト腫瘍の症例報告について、発表を指導された岩瀬春子先生は、浜松医大出身の東京大学産婦人科入局同期の先生です。
久しぶりにWEB会議で聞いた声は、柔らかみがありとても懐かしかったです。